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かんぽう武射 No.12 ◎平成8年2月10日発行

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韓国の旅

修学旅行の再来 韓国の旅

■韓国の旅
高橋 勇

 秋酣の成田から、ひとっとびで金浦空港へ。“アンニョンハシムニカ”ここはもう寒風吹きすさぶすっかり冬の空だった。
 先ず民俗村を見学する。李朝時代の風物をよく復原してあり興味深い。
 バスは半島を南下して、古都慶州に向う。車窓をよぎる風景は、工場が建ち、マンションが林立し、高速道路は車で溢れ、日本の風景とあまり変らない。
 翌朝、石窟庵に釈迦如来座像を拝す。振り返ると梢越しに海が見える。日本海、こちらでは東海と云うそうである。海の向うは出雲だ。太古、神々の時代から、神話と歴史の間に数々の謎を残したまま、海の道は水平線の彼方に消えている。
 次の日は百済の旧都に入る。
 “国破れて山河あリ”と申しますが、公州にも、扶余にも百済の古都の姿はない。
 公州宗山里古墳群に武寧王稜を見学する。地上から全く姿を消した百済の、絢爛たる文化は、偶然にも地下から長い眠りを破って、姿を現したと云う。山腹にお椀を伏せた様な古墳群に、日本と韓国の強い歴史の絆を感ずる。郊外の明花洞古墳は埴輪を持つ前方後円墳であると云う。歴史に記録はない。
 最後の都扶余は、日本からの援軍も空しく落城するが、その時多くの人々が日本に逃れて来たと云われる。そして大和の地に、再びその文化が花開く事になったと思われる。わが祖国を想う百済の人々は、新羅を深く恨んだ事でしょう。それが両国の間に長く影を落す事になったのではないか。
 最後の日はソウルで、中央博物館を見学。旧朝鮮総督府の建物であり、建替工事が始り塔の部分が下に降ろされてあった。近代日本の朝鮮認識を象徴する様な所である。
 心に残る旅でした。又何時の日か。
“アンニョンヒ カシプシオ”

■修学旅行の再来 韓国の旅     谷 礼子

 今、この原稿を書くにあたり、改めて写真を見直してみますと、皆様の楽しげな様子がこの旅の心地良さを物語っているようです。
 一年も前からの企画、そして「アンニョンハシムニカ通信」の発行、説明会、パスポートの申請等々、楽しみながらの手作りの準備は、嫌が上にも旅の気分を高揚させてくれました。そう言えば、真先に申込みをしたのは、この私でした。
 成田を発ち、約二時間半、空から見た金浦空港は土っぽく、いかにも開発途上という感じてしたが、いざ空港に降り立ってみますと異国と云うには、余りに馴染み過ぎておりました。時差がないのだから当り前と言えばそれまでですが、やはり同じ文化圏にあるのだと云う実感と安堵感がありました。食事にしても全く違和感なく受け入れることができました。これは食材がほとんど日本と同じだからでしょうか。又、バスの中から見える風景は、大都会ソウルを除けば、稲刈りの終った田園、山の中腹にある墓、そして建物にも昔どこかで見たような懐しさがあり、走っている車に至っては、日本車のコピーのようで、少々運転は乱暴なものの、日本の道路を走っているような錯覚に陥りました。唯、教会がかなり目につき、キリスト教信者が多いと云うお話には一寸意外な気が致しました。統一教会は少ないそうですが、その下地にはなっているのかもしれません。
 さて、「古墳を歩く会」の番外編という本来の目的を考えますと、まさに盛りだくさんであったように思います。特に慶州、扶余、公州、中央博物館の見学は大変興味深く、中でも中央博物館の陶磁器の展示には目を見張るものがありました。できることなら「一つ一つ触れてみたい」と思いながら心を残してまいりました。この建物はもとの朝鮮総督府をそのまま利用しているとのことでしたが、近々取り壊されるという説明に、日本人として複雑な気持ちになりました。しかし韓国の方々からすれば、今まさに自分達の手で一つの過去を清算することに意味があり、又それが証なのでしょう。
 その他、古墳公園、民俗村、仏国寺、天馬古墳など行く先々も観光地としてかなり整備されており、ふと立ち寄った骨董のお店もなかなかの風情ではありました。原宿のような明洞、何もかもが入り混った南大門市場の“おのぼりさん”状態でのそぞろ歩き、夜々の酒宴、レクチャーも含めて、何十年ぶりかの修学旅行のようでした。「百聞は一見に如ず」と申しますが、自分の不勉強はさておき、ご同行の五代先生はじめ、諸先生方のお話の中にその百聞を見つけ、「百聞があるからこそ一見が生きる」と云うこの言葉の持つ意味を改めて知る思いでした。三泊四日では無理なのかもしれませんが、地元の方々との直接的な触れ合いがあれば、「なお良かったのではないか」という気も致します。しかし、韓国の底知れぬ力(日本が失いつつあるもの)を感じることはできたように思います。
 最後に、この“心地良い旅”をコーディネイトして下さった福間さん、渡辺さん、斉藤さん、そしてご同行の皆様方に感謝申し上げたいと思います。「友の会」の益々の発展を祈りつつ。

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